教育資金の一括贈与の特例は廃止予定。これから教育資金はどう準備すべきか
※本記事は、現時点で示されている方針・報道ベースの情報をもとに整理したものです。
制度は変更される可能性があるため、実際に利用する際は必ず最新の公式情報をご確認ください。
はじめに|教育資金の定番制度が見直される
教育資金の準備方法として、これまで一定の資産を持つ家庭に使われてきたのが「教育資金の一括贈与の特例」です。
しかし、この制度は将来的に廃止される予定とされています。
(予定では2026年3月31日まで)
最近の税制改正の流れを見ると、「使える人が限られる優遇制度」「富裕層向けになりやすい制度」は、見直しや縮小の方向に進んでいます。
教育資金の一括贈与の特例も、その流れの中にある制度だと考えられます。
教育資金の一括贈与の特例とは
まず、制度を簡単に整理します。
制度の概要(これまで)
父母・祖父母などから子・孫へ教育資金として最大1,500万円まで贈与税が非課税という制度です。
専用口座を金融機関で開設し、そこから教育費として支出した分だけが非課税扱いになります。
なぜ廃止される方向なのか
廃止が検討されている理由は、主に次の点だと考えられます。
①利用できる人が限られている
・まとまった資金を一括で贈与できる。
・祖父母世代に資産がある。
という家庭でないと、そもそも使いにくい制度でした。
②実質的な相続税対策になりやすい
・教育費として使い切られない
・使い切れずに相続時まで残る
といったケースもあり、本来の趣旨からズレた使われ方が指摘されていました。
③税制全体の公平性の問題
現在の税制は、一部の人だけが大きな恩恵を受ける制度や、分かりにくい優遇措置を整理・簡素化する方向に進んでいます。
その中で、教育資金の一括贈与の特例は「残り続けにくい制度」だったと言えます。
廃止されたら困る人・困らない人
ここで重要なのは、全ての家庭が困るわけではないという点です。
困りやすいケース
・祖父母から多額の教育資金援助を想定していた
・私立・留学などで高額な教育費を見込んでいる
・一括で資金を移したかった
あまり影響がないケース
・毎月・毎年コツコツ準備する予定
・家計の中で教育費を積み立てている
・少額ずつ贈与を受ける想定
多くの家庭では、実は「影響が限定的」なケースも多いと感じます。
これからの教育資金準備の考え方
一括贈与の特例が使えなくなる前提で、今後は別の方法を組み合わせて考える必要があります。
①暦年贈与をシンプルに使う
年間110万円までの暦年贈与は、今後も基本的な制度として残る可能性が高いです。
必要な分を必要なタイミングで少しずつという形は、制度変更の影響を受けにくい方法です。
②親世代が準備する(こどもNISAなど)
前回の記事で触れた新NISAの積立投資枠(こどもNISA)のように、
親が主体となって、長期で積み立て教育資金として使うという形は、今後の主流になっていく可能性があります。
③「一括で用意する」発想を手放す
教育費は確かに大きな支出ですが、必ずしも最初から全額を用意する必要はありません。
・時間を分散する
・収入と並行して準備する
・制度変更リスクを下げる
という意味では、分散型の準備の方が現実的です。
制度は「ある前提」で動かない
今回の話で一番伝えたいのは、
制度は変わる。使えなくなることもある。
予告なく条件が変わることもある。
教育資金の一括贈与の特例も、「ある前提」で計画を立ててしまうと、後で修正が必要になります。
まとめ|選択肢を広く持っておく
・教育資金の一括贈与の特例は今年度で廃止予定
・富裕層向け制度は今後も見直されやすい
・多くの家庭では影響は限定的
・暦年贈与や新NISAなどを組み合わせる発想が大切
・制度に依存しすぎない準備が重要
教育資金は、「正解が一つ」ではありません。
制度を知ったうえで、自分の家庭に合う方法を選べる状態になること。
それ自体が、最大のメリットだと思います。
チョキンとチョキン。