お金の知識上級編5 なぜ人は高値で買い、安値で売るのか

理屈では分かっているはずなのに、
現実の相場では、なぜか同じ行動を繰り返してしまう。

上がり続ける相場を見ると、乗り遅れた不安が膨らみ、
下がり続ける相場では、これ以上の損を恐れて手放したくなる。

結果として、
高値で買い、安値で売る
投資家なら誰もが聞いたことのある失敗です。

この記事では、
この行動が意志の弱さや知識不足ではなく、
人間の思考構造そのものに組み込まれている
理由を整理し、
長期投資家としてどう向き合うべきかを考えます。


まず前提:これは「異常行動」ではない

高値で買い、安値で売る行動は、
投資家の失敗談として語られがちです。

しかし結論から言えば、
この行動は人間として極めて自然です。

むしろ、
進化の過程では合理的だった行動が、
金融市場では裏目に出ているにすぎません。


人間は「変化」に過敏に反応する

人間の脳は、
絶対値よりも変化に強く反応します。

価格が「高いか安いか」よりも、
「上がっているか、下がっているか」のほうが、
感情を揺さぶるのです。

状況感じやすい感情
価格が上がり続ける期待・焦り・取り残される恐怖
価格が下がり続ける不安・後悔・恐怖

この感情の流れに沿って行動すると、
自然と「高値で買い、安値で売る」判断になります。


群集心理という強力な圧力

もう一つ重要なのが、他人の行動です。

多くの人が買っていると、
「何か理由があるはずだ」と感じる。

多くの人が売っていると、
「自分だけ残るのは危険だ」と感じる。

これは情報収集ではなく、
安心を得るための行動です。

集団の中にいれば、
たとえ結果が悪くても、心理的な痛みは和らぐ。
人間はそういう生き物です。


損失は利益よりも強く感じる

人は、同じ金額でも、
得る喜びより、失う苦しみを強く感じます

これは「損失回避」と呼ばれる思考特性です。

含み損が膨らむと、
冷静な期待値よりも、
「これ以上の痛みを避けたい」という感情が前に出ます。

その結果、
安値での投げ売りが起こりやすくなります。


よくある誤解①「感情を排除すれば解決する」

感情を完全に排除することはできません。

むしろ、
感情が出る前提で設計されていない投資行動は、
長続きしません。

大切なのは、
感情をなくすことではなく、
感情が判断に影響しにくい形に整えることです。


よくある誤解②「経験を積めば起きなくなる」

経験を積んでも、
この問題は完全には消えません。

相場環境が変われば、
初めての不安や恐怖が、また顔を出します。

だからこそ、
経験よりも仕組みが重要になります。


実践への落とし込み:どう設計すればいいか

長期投資家ができる対策は、派手ではありません。

  • 売買回数を減らす
  • ルールを事前に決めておく
  • 価格ではなく保有目的を見る

積立投資や定期リバランスは、
感情に逆らうのではなく、
感情を前提にした仕組みです。

自分を鍛えるより、
自分が間違えにくい環境を作る。
これが、長期投資の現実的な答えです。


まとめ

  • 高値で買い、安値で売るのは人間として自然
  • 変化・群集・損失回避が行動を歪める
  • 感情は排除できない前提で考える
  • 経験よりも仕組みが行動を支える
  • 長期投資は「設計のゲーム」

感情が動くのは、真剣に向き合っている証拠です。
だからこそ、迷ったときに立ち戻れる形を、
あらかじめ用意しておくと安心です。